社会的視野、バランス感覚を持って助言する。
真に依頼人の利益を守るために。
私は、物事にこだわらず爽やかに生きたいと思う反面、実はたぶん粘着質なんだと思います。例えば聴き取りでも、普通なら「ここまででいい」と思うところでも、さらに突っ込んで聴いていることが多いです。この程度の情報で方針も立てられるし、書面も書けると思うものでも、念のため背景事情も聴いてしまう。
また依頼人との打ち合わせでも、「もうちょっとこの部分を説明した方が、より理解いただけるのでは。」との思いから、つい多く説明しています。多分説明しながら、自分の頭の整理をしているんだと思います。後輩からは、天野と一緒の打ち合わせは長引きがちだと敬遠されています。
弁護士歴40年を超えました。
とくに北浜法律事務所に入所後は、裁判所の倒産部からの選任による管財人事件を数多く経験させていただきました。キャリアの4分の1ほどは倒産法関係、あるいは事業再生に絡む分野です。会社更生事件とか民事再生事件は、生きているけれど経済的に窮境にある事業体を、動かしながら手当てしていかないといけないというしんどさがあります。
破産の場合であれば、事業も閉じ財産を保全し、できるだけ有利に売却し、法律に従い債権者に公平に分配していけばよい。一方、生きている事業体の場合は、従業員も家族も、みんな運命を共にしている。取引先も連鎖倒産の可能性がある。そこにも従業員も家族もいる。その中で活路を開かねばならない。泥くさいですが、やりがいのある仕事です。
弁護士は、依頼人の権利、利益を守るのが仕事です。ふつうは依頼人にとって、より有利な解決、金額的にいえば、より多くの成果を得られるよう精力を傾けることが第一義だと思われます。ただ、その際に守るべき依頼人の「利益」という中には、その方の単なる経済的利益だけではなく、社会的な名誉、また企業で言えば、レピュテーションやコンプライアンスの保持、向上といった価値も当然に含まれてきます。
したがって、弁護士は、依頼人の利益を守るためにこそ、依頼人とベッタリではなく、少し距離を置いて伴走しつつ、その事案を眺めるという、冷静で、ある意味さめた視点をもっていなければならない役目なのです。
私は、顧問先にも、社外役員を務める会社にも、適法、違法の判断は勿論、それに加えて、「この選択をすることで、企業が社会的にどのように見られるのか」の観点も意識しつつ、アドバイスをするよう心がけています。いま企業の長期的な成長のためにも、環境 (Environment) 、社会 (Social) 、ガバナンス (Governance) の観点が必要だと言われています。目先の利益のみの優先ではなく、広い視野を持って企業価値を上げることが、結果的に競争力の源泉になります。これからも、この観点から、爽やかさと粘着質を両立させながら、企業、個人を含め、依頼人に対するサポートを続けて行きたいと思います。
クライアントとともに。