企業のSNSリスクマネジメント②(第2回)
概要
現代において、企業(会社だけでなく、団体や個人事業主なども広く含みます。)によるSNSの活用は、広報、知名度・イメージ向上、採用活動など、多様な面で極めて重要なツールであると認識されるに至っています。
その一方で、SNSは常に、炎上や秘密情報の漏えいなどのリスクと隣り合わせであり、場合によっては、長年にわたって積み上げてきた信頼が一瞬にして損なわれてしまったり、顧客離れや株価下落を招いてしまったりすることもあります。
そこで、本コラムでは、企業活動とSNSに潜むリスクと対策を、Twitter(現X)日間トレンドワード5位にまで至った事案を数日で鎮静化させた経験のある弁護士が具体例を交えつつ解説します(全3回)。
本コラムは第2回となります。ぜひ第1回からご覧ください。
目次
October 15th, 2025
従業員や関係者による不適切な投稿等がなされたケース
従業員や関係者が不適切な投稿を行ってしまい、そのことが企業と紐づけられてしまうことでも、炎上やその他の被害が発生ずることがあります。
ケース
1)従業員等による店舗等での不適切行為の投稿
典型例では、従業員が店舗内で悪ふざけをしている姿を収めた動画が投稿されるといったケースが考えられます。仮にアルバイト従業員や業務提携先(販売代理店やフランチャイズ加盟店など)であっても、企業の看板が表示されていれば、その企業の一側面であると認識されてしまい信頼を大きく損なうおそれがありますし、事後対応に多大なコストが生じてしまう場合もあります。
2)秘密情報や個人情報、取引先情報の投稿発生頻度は高くありませんが、たった一つの投稿が重大なインシデントとなり得るものですので、確実に防止する必要があります。
3)ステルスマーケティングの疑いがかけられてしまう投稿
従業員が、個人の意見として善意で自社の商品やサービスを宣伝した場合、企業の指示は一切なかったとしても、ステルスマーケティングではないかと疑われてしまうことがあります。なお、ステルスマーケティングも、令和5年10月1日から景品表示法により禁止されています。
投稿例
(いずれも実際にあった事案をもとにして作成した架空の投稿です。)
・店舗調理室での不衛生行為を撮影した動画の投稿
・「 ● ●(芸能人の氏名)が来店されて ■ ■ を購入されました!」
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事前の対策・事後の対応
基本的には、公式アカウント等の運営と同様ですが、投稿自体やその内容がフェイクの可能性がありますので、事実確認が取れるまでは断定的な表現は行わないようにすることが重要です。例えば、次のような対策・対応が考えられます。
事前の対策 |
事後の対応 |
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従業員の法律知識やコンプライアンス意識の向上施策(社内研修の実施等)
【補足】
実際の炎上事例を交えたケーススタディが効果的です。
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ソーシャルメディアガイドライン策定
【補足】
SNSの利用方針や利用上のルール、免責事項等を規定するものです。ポリシーという形式でウェブ公開する事例も多くみられます。
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就業規則等における不適切投稿等の抑制
【補足】
単に禁止するだけでなく、懲戒事由と定めておくことも有効です。ただし、企業の名誉や信用、財産へのダメージが生じていない場合における懲戒処分の実施には慎重な検討が必要です。
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<事実確認前>
すみやかな謝罪
すみやかな公式発表
【補足】
事実確認を行っている旨やお騒がせしていることについての謝意はすみやかに表明しておくことが穏当です。
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<事実であることの確認後>
すみやかな報告と謝罪
再発防止の宣明
適切かつ迅速な被害回復措置の実施
【補足】
例えば、不衛生行為の場合には、当該店舗の清掃の実施などが考えられます。 |
当該従業員に対する厳正な処分の表明
【補足】
これを行わない場合には、身内に甘い、事なかれ主義などといった印象を与えてしまいます。法的措置も辞さない姿勢で毅然とした対応を行いましょう。他方で、役員などの役職者による投稿の場合には、企業は一概に被害者であるとは評価されませんので、そのことを意識した対応も重要となります。 |
損害や影響の把握
(個人情報の漏えいの場合)個人情報保護法に基づく対応
|
事前の対策 |
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従業員の法律知識やコンプライアンス意識の向上施策(社内研修の実施等)
【補足】
実際の炎上事例を交えたケーススタディが効果的です。
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ソーシャルメディアガイドライン策定
【補足】
SNSの利用方針や利用上のルール、免責事項等を規定するものです。ポリシーという形式でウェブ公開する事例も多くみられます。
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就業規則等における不適切投稿等の抑制
【補足】
単に禁止するだけでなく、懲戒事由と定めておくことも有効です。ただし、企業の名誉や信用、財産へのダメージが生じていない場合における懲戒処分の実施には慎重な検討が必要です。
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事後の対応 |
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<事実確認前>
すみやかな謝罪
すみやかな公式発表
【補足】
事実確認を行っている旨やお騒がせしていることについての謝意はすみやかに表明しておくことが穏当です。
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<事実であることの確認後>
すみやかな報告と謝罪
再発防止の宣明
適切かつ迅速な被害回復措置の実施
【補足】
例えば、不衛生行為の場合には、当該店舗の清掃の実施などが考えられます。 |
当該従業員に対する厳正な処分の表明
【補足】
これを行わない場合には、身内に甘い、事なかれ主義などといった印象を与えてしまいます。法的措置も辞さない姿勢で毅然とした対応を行いましょう。他方で、役員などの役職者による投稿の場合には、企業は一概に被害者であるとは評価されませんので、そのことを意識した対応も重要となります。 |
損害や影響の把握
(個人情報の漏えいの場合)個人情報保護法に基づく対応
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※
:必要な対応
:望ましい対応
※ あくまで一例であり、あらゆる事案において適切な対応というものではありません。
他方で、例えば、次のような対応は避けるようにしましょう。
避けるべき対応 |
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事実確認前に事実であることを前提とした謝罪を行うこと
投稿の放置
被害者であることに終始すると受け止められるおそれのある発表
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【補足】
このケースでは、企業は基本的に被害者側という立場ではありますが、投稿者の使用者ではありますので、被害者側一辺倒な姿勢が適切ではない状況も往々にして生じます。世論の温度感や潮流を的確に把握するようにしましょう。
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第三者による不適切な投稿等がなされたケース
顧客などの第三者により不適切な投稿が行われることで企業が直接的・間接的に炎上したり、大きな損害が生ずることがあります。
ケース
1)誤った情報の投稿いわゆる、ガセ情報が拡散された場合には、全く根も葉もないことであっても、信用が大きく毀損し、最悪の場合には、企業の存亡にかかわることもあります。投稿内容が虚偽であると即断することは危険ですが、放置してしまうこともまた黙認と捉えられてしまうおそれがあります。虚偽であると確定した場合には、可能な限りすみやかに毅然とした対応をとることが望ましいです。
2)第三者による店舗等での不適切行為の投稿典型例では、顧客による店舗内での迷惑行為や不衛生行為が拡散されてしまうケースが考えられます。この場合、企業側は被害者であるという側面が大きいことから、第一には、投稿者や行為者が炎上の対象となります。しかし、このような状況において企業が緩慢な対応を行ってしまうと、批判の矛先が企業に向いてしまうことがあります。
投稿例
(いずれも実際にあった事案をもとにして作成した架空の投稿です。)
・「 ● ● 株式会社は反社会的勢力とつながっています!」
・店舗内での悪ふざけを撮影した動画の投稿
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事前の対策・事後の対応
このケースではその性質上、事前の対策でカバーすることは困難ですので、事後の対応が中心にならざるを得ません。常識的な対応を行っていれば企業自身に飛び火する危険性は小さいですが、一方で深刻な損害が生ずることもありえますので、迅速かつ毅然とした対応が必要です。例えば、次のような対策・対応を行うことが考えられます。
事前の対策 |
事後の対応 |
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ソーシャルメディアガイドライン策定
【補足】
SNSの利用方針や利用上のルール、免責事項等を規定するものです。ポリシーという形式でウェブ公開する事例も多くみられます。
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就業規則等における不適切投稿等の抑制
【補足】
私用のスマホ等、業務に必要のない端末や機器については、業務時間内の私的利用や業務場所への持ち込み自体を就業規則により禁止することが考えられます。
私用のスマホ等、業務に必要のない端末や機器については、業務時間内の私的利用や業務場所への持ち込み自体を就業規則により禁止することが考えられます。 |
対応マニュアルの策定・有事対応のシミュレーション
SNS投稿やトレンド、動向の把握
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<事実確認前>
すみやかな謝罪
すみやかな公式発表
【補足】
事実確認を行っている旨やお騒がせしていることについての謝意はすみやかに表明しておくことが穏当です。
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<【共通】事実確認前>
すみやかな報告と謝罪
すみやかな公式発表
【補足】
事実確認を行っている旨やお騒がせしていることについての謝意はすみやかに表明しておくことが穏当です。 |
<【A】事実であることの確認後>
確認結果報告(・謝罪)
適切かつ迅速な被害回復措置の実施
【補足】
例えば、不衛生行為の場合には、当該店舗の清掃の実施などが考えられます。 |
投稿者に対する厳正な処分の表明
【補足】
対応の甘さから信頼を失うリスクがありますので、法的措置も辞さない姿勢で毅然とした対応を行う旨の表明が推奨されます。 |
損害や影響の把握
<【B】事実でないことの確認後>
確認結果報告
投稿内容の否定
【補足】
否定は、相対的に信用されにくいため、相当程度のボリュームを伴った報告書や資料の公表も検討すべきです。 |
投稿者に対する厳正な処分の表明
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事前の対策 |
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ソーシャルメディアガイドライン策定
【補足】
SNSの利用方針や利用上のルール、免責事項等を規定するものです。ポリシーという形式でウェブ公開する事例も多くみられます。
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就業規則等における不適切投稿等の抑制
【補足】
私用のスマホ等、業務に必要のない端末や機器については、業務時間内の私的利用や業務場所への持ち込み自体を就業規則により禁止することが考えられます。
私用のスマホ等、業務に必要のない端末や機器については、業務時間内の私的利用や業務場所への持ち込み自体を就業規則により禁止することが考えられます。 |
対応マニュアルの策定・有事対応のシミュレーション
SNS投稿やトレンド、動向の把握
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事後の対応 |
| <事実確認前>
すみやかな謝罪
すみやかな公式発表
【補足】
事実確認を行っている旨やお騒がせしていることについての謝意はすみやかに表明しておくことが穏当です。
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<【共通】事実確認前>
すみやかな報告と謝罪
すみやかな公式発表
【補足】
事実確認を行っている旨やお騒がせしていることについての謝意はすみやかに表明しておくことが穏当です。 |
<【A】事実であることの確認後>
確認結果報告(・謝罪)
適切かつ迅速な被害回復措置の実施
【補足】
例えば、不衛生行為の場合には、当該店舗の清掃の実施などが考えられます。 |
投稿者に対する厳正な処分の表明
【補足】
対応の甘さから信頼を失うリスクがありますので、法的措置も辞さない姿勢で毅然とした対応を行う旨の表明が推奨されます。 |
損害や影響の把握
<【B】事実でないことの確認後>
確認結果報告
投稿内容の否定
【補足】
否定は、相対的に信用されにくいため、相当程度のボリュームを伴った報告書や資料の公表も検討すべきです。 |
投稿者に対する厳正な処分の表明
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※
:必要な対応
:望ましい対応
※ あくまで一例であり、あらゆる事案において適切な対応というものではありません。
他方で、例えば、次のような対応は避けるようにしましょう。
避けるべき対応 |
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事実確認前に事実であることを前提とした謝罪
投稿の放置
事実確認後の緩慢な対応
投稿者に対する過度な批判、誹謗中傷
投稿者の炎上を助長するおそれのある表明や対応
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【補足】
事案の重大性にもよりますが、愛されている企業ほどその企業のフォロワーが投稿者に攻撃を仕掛けるリスクが上がります。その勢いを助長するような対応を企業がしてしまうと反感を招くおそれがあります。ケースによっては、被害者である企業が率先して制止することも大切になります。
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第3回では、お客様などの第三者による投稿について解説します。
以降の予定
第3回
告発的な投稿等がなされたケース
【ケース】
①企業内でのハラスメント被害や不当労働行為等を告発する投稿
②第三者による苦情等の投稿
【投稿例】
【事前の対策・事後の対応】
おわりに
本記事の内容は、公開日現在のものです。最新の内容とは異なる場合がありますので、ご了承ください。
執筆弁護士
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