Tokyo 東京事務所座談会

Theme 01 立ち上げの経緯

生田 東京事務所の正式開業は2003年1月。2002年弁護士法が改正されて、支店事務所の開設が可能になった翌年でしたね。

荒川 記念すべき2003年!大阪発祥の北浜法律事務所にとって「東京」は未知のマーケットです。そこに降り立ったのが、私を含めてまだ弁護士登録数年目のメンバー。「東京事務所」の未来が若手に委ねられたのです。あれから15年が経ち、今では私が入所した頃の北浜法律事務所に匹敵する人数に到達しました。

江鳩 私はM&A、証券市場、コーポレートの専門家として2014年に入所した中途採用組ですが、東京事務所では、中途採用を積極的に行っていますね。

荒川 そうですね。設立数年目から、高い専門性を持って柔軟な対応ができる弁護士の獲得に力を注いできました。その結果として、東京事務所には、創業者世代、シニアパートナーのような年次の離れた「ボス」はいないんですね。また、所属する弁護士の約半数、パートナーの約半数は、中途採用された外部人材ですから、案件獲得や案件処理も協働することが多く、お互いの専門性を生かしシナジー効果を高めています。事務所の運営についても、合議制を大切にしています。

生田 業務面だけでなく、東京事務所のメンバーは、パートナー弁護士もアソシエイトや事務局スタッフも、みんなで飲んだり遊んだりすることが大好きでしょ。事務所の公式行事以外でも、しょっちゅう宴会や遊びの企画が生まれていますね。

酒井大輔 所内の一体感はすごくありますよね。先日の事務局スタッフの送別会も、自由参加でしたが、ほぼ所員全員が集まりました。豊富なコミュニケーションが、フラットな人間関係や信頼関係を生み出しているのだと思います。パートナー同士、パートナーとアソシエイト、弁護士と事務局、風通しの良い関係が、良い仕事に繋がっていると感じています。

荒川 確かに。クライアント対応や仕事のスピード、仕事の質。これらを支えているのが所内のコミュニケーションです。我々の「若さ」「多様性」「風通しの良さ」は、東京事務所の素晴らしい特長ですが、他方で、それらは、未熟さや集団としてのまとまりの無さといった弱みにも繋がるんじゃないかと思うこともあります。私は、我々のそういった点に対して岡田康彦弁護士から、時に厳しい意見をもらえるのがとても有難いんです。大蔵省のキャリア官僚として35年を歩まれた岡田先生が、東京事務所のご意見番をしてくださっていることが安心ですね。

江鳩 私は、環境事務次官をはじめとして数々の公的組織でトップを務められた岡田先生の貴重なご経験や見識を直にお聴きでき、勉強させていただいています。

岡田 若いパートナーの皆さんとチームで仕事をするのは私にとっても嬉しいことです。大蔵省や国税局、環境省でのキャリアや金融機関経営を通して、数え切れないほどたくさんの試練を乗り越えてきました。おかげさまで自分の中に判断材料がいっぱいあります。その経験が、クライアントや仲間のお役に立てたらこれほど嬉しいことはありません。

Theme 02 東京事務所の特長

江鳩 東京事務所では、既存の顧問先からの依頼だけでなく、投資銀行や監査法人などからご紹介頂いて、プロジェクトを契機として新規に受任する機会が多いです。各企業のコンプライアンス意識が高まっていますし、M&A市場も活況です。数多ある企業法務やM&Aを取り扱う事務所の中で、東京事務所の仕事の質を多くの企業に実感していただきたいですね。

生田 東京だけでなく、北浜法律事務所のどの拠点でも共通ですが、執務室は大部屋というのは弁護士事務所としては珍しいですね。仕切りはプライバシーを尊重する高さのパーティションで、ちょっとした相談をしたいときには、軽く立ち上がって周囲に話しかける。思わぬ方向から回答が得られることもあり、非常に効率的で、密接なコミュニケーションが取れる環境です。

酒井大輔 コミュニケーションの面で言えば、東京事務所では年2回を目途に1泊2日のパートナー合宿を開催しています。普段の会議ではじっくりと議論する時間がとりにくい中長期的な課題や事務所の大きな方向性など、より本質的な問題について、時間をかけて議論しています。温泉宿での会議は普段の会議室とは違った雰囲気で、お酒が少し入った状態でのざっくばらんな議論も楽しく貴重な時間です。合宿の結果、パートナー間で、より深く問題意識を共有でき、またパートナー間の結束・信頼関係がより強固なものとなっていることを実感しています。

荒川 プラクティスグループは、東京だけに活動が絞られているものはありませんが、チャイナチームのメンバーは全て東京に在籍していますね。非常にアクティブです。IP(知財)プラクティスに関しては、他拠点事務所との協働で活動しつつも、東京事務所内で内部チームをつくって相談しながら知識を深めています。

Theme 03 注力分野

荒川 東京事務所の注力分野の第一は、やはりクロスボーダー案件ですね。M&A、業務提携やライセンス、独禁法等のコンプライアンス、個人情報保護、訴訟・仲裁といった紛争解決に至るまで、従来の顧問先からのご相談か、新規のクライアントからのご相談であるかを問わず、クロスボーダーの要素が一切ない案件の方が、むしろ珍しいです。国内業務においては、従来から業務の中心となっているM&A・コーポレート分野に加えて、今、環境・エネルギー、AIやIoTなどの新技術・ビッグデータの活用を含めた知的財産権分野の依頼が増えています。

酒井大輔 私は海外関連分野を重点強化しています。自分自身の海外業務・国内業務の業務比率としては、6:4くらいの割合ですが、特に私の専門分野であるM&Aにおいては、国内業務に比べて海外業務は弁護士不足が目立ち、我々がサポートしたいところです。東京事務所は、海外駐在経験のある弁護士が多いのが特長です。日本企業を依頼者とするクロスボーダー案件においては、様々な国の現地法律事務所と緊密なネットワークがあり、たくさんの案件を協働することを通じてシームレスなサービスができます。このことは顧客に付加価値を提供する上で非常に重要ですので、今後も引き続きこの点を強化していきたいと考えています。

生田 私はGDPR(EU一般データ保護規則)が登場して以来、ますます欧州対応に追われています。M&Aや仲裁、知財ライセンスといった伝統的国際案件の他に、コンプライアンス対応案件が急増していますので。国際倒産事件も増加しています。欧州に関してのトレンドは、インバウンドではなくアウトバウンドです。国別にいうと、フランス、英国、ドイツ案件が急増しており、イタリア、スペイン、東欧の案件も増加中です。英国に関してはBREXITからも目が離せません。またデータプライバシーについては、大阪、福岡の弁護士とも協働して全事務所で対応する体制を整えていますが、今後はさらにEプライバシー等への対応が必要となるため、当分はデータプロテクション等ITやデータ分野への対応が重要になってくると考えており、各専門分野の各国弁護士との連携を深めているところです。

江鳩 私は国内のM&Aや企業業務を中心に取り扱っていますが、渉外業務に関わる機会は年々増えており、次第に国内業務と渉外業務との境界線が薄まってきているように思います。そのため、今後は渉外業務に関わる機会も増えてくると思われますが、そのような場合でも依頼者は国内企業であることが多く、また、渉外業務においても国内業務をベースとした対応を求められるケースが多くあります。そこで、引き続き国内のM&Aや企業法務に従事しつつ、渉外チームとも連携を図りながら、国内・渉外を問わず、幅広い業務を取り扱っていくことを考えています。

荒川 切磋琢磨し合って、雰囲気がとても良い東京事務所です。岡田先生に定期的に所内勉強会をしていただきながら、「若さ」「多様性」「風通しの良さ」を活かして、より一層素晴らしい東京事務所を築いて行きましょう。