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【第1回】今さら聞けない…AIって何?

February 15th, 2024

はじめに

2022年11月にChat GPTがサービスを開始して以降、生成AI(Generative AI)は常に世界の話題の関心の中心であり続け、今もなお衰える気配はありません。 しかし、実は「AI」というものについてよく理解できていない、ほかのコンピュータープログラムとは何か違うんだろう、と内心思われている方もいらっしゃるかもしれません。また、Chat GPTを早速業務に取り入れようと考えている企業様におかれては、導入することに対する安全性・適法性上の疑問をお持ちかと思います。 そこで、このコラムでは、そもそもAIとはどういうものかを分かりやすく解説したうえで、AIを法的に考えたときのポイントや、今後我々の社会の中でAIはどう活用されていくのか等を解説いたします。

AIの起源と現代のAI

AIの起源は約70年前に遡ります。1956年、アメリカの計算機学者ジョン・マッカーシーは、AI(Artificial Intelligence:人工知能)を「人間の脳に近い機能を持ったコンピュータープログラム」と定義し、1950年代~1960年代にかけて第一次AIブームが起こりました。しかし、この頃のAIは、チェスやパズルなどの、明確なルールがあるゲームの答えを出すだけの存在でした。 その後、機械学習という、あるデータから一定のパターンを分析する手法が編み出されますが、その頃の機械学習では、「特徴量」(予測の手がかりとなるような要素・変数)を自動的に捉えることができず、人がこれを設定するほかありませんでした(例えば、売上予測のために過去の購買データを分析するAIであれば、「曜日」「天気」などが特徴量に該当すると考えられます。) ところが、2010年代以降、様々な種類・形式のデータを含む巨大なデータ群(ビッグデータ)が構築されるようになってきたことや、ハード面の急激な進歩を背景に、「ディープラーニング(深層学習)」という機械学習の一種の手法が急速に普及し、AIは飛躍的な発展を遂げました。 ディープラーニングとは、人間の脳の構造(ニューラルネットワーク)を模して応用した機械学習の仕組みであり、入力層と出力層の間に多数の隠れ層(中間層)と呼ばれる関数を挟むことにより、より複雑な分析を行うことができるようになり、かつ、人が「特徴量」を指定せずとも、自律的に学習できるようになりました。

プロンプト具体例
デイープニューラルネットワーク

ChatGPTなどの生成AIは、これまでのAIと何が違うのか

生成AIも、ディープラーニングの手法を用いており、その意味では従来のAIと変わるものではありません。もっとも、自然言語処理、画像生成、音声合成、音楽生成、3Dモデル生成といった、「表現する」という側面に強みを持っていることや、何より自然言語をインターフェースとして使用しているため、誰でも簡単に利用できる点に特徴があり、AIの利活用領域が一気に広がることが期待されています。他方で、生成物の取扱いなど、新たな問題も発生しています。

【Tips】ChatGPTの仕組み

OpenAIが提供するChatGPTは、GPTと呼ばれる大規模言語モデルを基盤にしています。大規模言語モデルとは、膨大なテキストを与え、文の次の単語を予測するという単純なタスクを訓練することにより、様々な言語の構文や言葉の意味を学習するAIです。GPTには複数のバージョンがあり、その中でも最新のもの(本記事公開時点)がGPT-4 Turboです。 ChatGPTでは、「プロンプト」と呼ばれる指示文を入力することにより、回答が自動的に作出されます。ChatGPTでは単に与えられた質問に回答するだけでなく、それらしいコミュニケーションが行われる(ように見える)ところが、特徴と言えます。

【Tips】ChatGPTでの会話の例

ChatGPTでの会話の例

AIの法的問題と一口でいっても、様々な問題があります。大きな視点では、AIに人権や法的責任を認めるべきか、という議論すら存在します。現在のところ、AIは人間のコントロール下で利用される存在であるため、そこまでの問題を考える必要はなさそうですが、今後、シンギュラリティ(技術的特異点)を迎え、AIの自律性が人間を上回るような時代が来ることが想定できるとすれば、そのような本質的な議論も避けて通れないでしょう。 これに対し、目下生じている問題としては、例えば以下のようなものがあります。


本コラムでは、今後、このような法的問題について、順番に解説していきます。

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