ヒーロー画像

【第1回】メタバースとは?

May 15th, 2024

メタバースとは何か?

本連載では、「メタバースと法務」をテーマに解説を行います。本記事では、まず、「メタバースとは何か?」という問いに答えるべく、メタバースの基礎知識を解説します。

メタバースとは、メタ(meta=超越した)とユニバース(universe=世界)という単語を組み合わせた造語です。メタバースという単語は、1992年に出版されたSF小説「スノウ・クラッシュ」において、「アバターなどを用いて接するインターネット上に構築された仮想の三次元空間」を指す単語として用いられ、以後、一般的に認知されるようになりました。 もっとも、上記のメタバースの定義がそのまま定着しているわけではなく、論者によって様々な定義付けが行われています(※1)。本コラムでは、メタバースの定義に関する議論には踏み込まず、ネットワークを通じてアクセスでき、ユーザー間のコミュニケーションが可能な仮想空間のうち、特に、自己投射性・没入感、リアルタイム性、オープン性(誰もが参加できること)等の特徴を備えるものや、これに類するもの(※2)を、メタバース又はメタバース的な特徴を有する仮想空間サービスとして広く捉えることとします。

※1 総務省「Web3 時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会中間とり まとめ(これまでの議論の整理)」4 頁(2023 年 2 月 10 日)
※2 内閣府知的財産推進事務局「メタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法 的課題等に関する論点の整理」2 頁(2023 年 5 月)

メタバースの歴史

次に、メタバースの歴史について簡単に見ていきたいと思います。 既に述べたとおり、メタバースという単語が登場した1992年頃には、メタバースを体現する具体的なサービスはなく、あくまでも空想上の概念として捉えられていました。

2003年〜

その後、パソコン通信やインターネット上の仮想空間を利用した限定的なコミュニケーションツール等はありましたが、とりわけ、2003年、アメリカのLinden Lab社が「Second Life」と呼ばれるサービスを提供し、大きな注目を集めました。ユーザーは、仮想の3D世界を自由にカスタマイズし、アバターを操作して他のユーザーと交流を図ることができます。更に、ユーザーは、リンデンドルと呼ばれる仮想世界内の通貨を用いて、仮想世界内の土地の取引を行うこともでき、正に、「第二の人生」(Second Life)を送ることができるというサービスでした。こうしたサービスは当時画期的なものといえ、現在からみると、メタバースの先駆的な存在であったといえます。

2017年〜

その後、2017年には、アメリカのVrchat Inc.(Vrchat社)が「VRchat」を開始しました。VRchatは、ユーザーがVR機器により仮想世界内へ没入できる点に特徴があります。このように、VR技術の発展に伴い、同技術を用いたメタバースサービスも生まれてきました。

2021年〜

そして、2021年、Facebook社(旧社名)は、社名をMeta Platforms, Inc.(Meta社)に変更し、今後メタバース事業に注力していくことを対外的に公表しました。更に、具体的な目標(数値)として、今後10年以内に、メタバース人口を10億人にし、数百万人の開発者やクリエーターの雇用を支えられるような、数千億ドル(数十兆円)規模の電子商取引を行う経済圏の構築を行うことを掲げました。この発表により、メタバースという概念は広く認知されるようになりました。

このように、メタバースという概念自体は古くから存在していたものの、それが広く認知され、ビジネス領域において熱心に語られるようになったのは、ここ数年の話であるといえます。

代表的なメタバースの例

次に、現在提供されているサービスのうち、代表的なメタバースの例を3つ紹介します。

Horizon Worlds
「Horizon Worlds」は、2021年に、Meta社が開始したメタバースサービスです。ユーザーは、Meta社が制作しているVRヘッドセットを用いて仮想世界に没入し、アバターの姿になって、他ユーザーとコミュニケーションを図ることができます。また、ユーザーは、自らがクリエーターとなり、オリジナルの仮想世界を作ることもできます。

VRchat
「VRchat」は、2017年に、アメリカのVRchat社が開始したソーシャルVRプラットフォームサービスです。アバターを用いて仮想空間上でコミュニケーションを図るという点はHorizon Worldsと同じですが、VRchatの特徴は、多種多様なアバターを利用できる点にあります。例えば、人間型以外にも、動物や、植物、果てはモンスターのような異形の風貌のものがあり、より非現実的な世界観といえます。 また、VRchatでは、例年、アバター等の3Dデータ商品や、リアル商品を売買できる「バーチャルマーケット」が開催されており、多数の企業が商品の出展・売買を行っています。

The Sandbox
「The Sandbox」は、イーサリアムのブロックチェーン技術を基盤としたメタバースサービスです。ユーザーは、メタバース上に存在するLAND(土地)を購入することで、ゲームを作成したり、ASSETと呼ばれるコンテンツを作成したりできます。そして、ユーザーは、購入したLANDや作成したASSETをNFTとして他ユーザーに自由に売買することができます。更に、一部のユーザーは、DAO(※3)メカニズムを介し、プラットフォームの意思決定に参加することもできます。このように、NFTやブロックチェーンの技術を用いることで、ユーザー主導のゲームプラットフォームを実現している点が、The Sandboxの大きな特徴といえます。

※3 Decetralized Autonomous Organization の略称。メンバーによるブロックチェーン上の改ざん不可能な投票により、民主的運営を図る自律分散型組織のこと。

メタバースの価値

メタバースの価値は、以下の3点と整理することが考えられます。(※4)

  • 自己の拡張・自己実現(なりたい自分になれる。多様な幸せを実現できる)
  • 人との交わり・文化の融合(人と人とがつながる。境界を超える)
  • 価値の創出(新しい価値を生み出す)

メタバース内において、ユーザーは、多様な種類の中からアバターを選択し、「なりたい自分」になることができます(自己の拡張・自己実現)。現実世界では不可能な外見、性別等の変更を、メタバース内では、細かく容易に行えます。また、メタバースには、国籍や人種、文化の異なる様々なユーザーが存在しており、物理的な移動を伴うことなく、容易に、多様なユーザーと社会的・文化的な境界を越えた交流を図ることができます(人と人との交わり・文化の融合)。さらに、ユーザーがメタバース内において作成したアイテムやゲームに、単なるデジタルデータに留まらない固有の価値が付加されることもあります(価値の創出)。例えば、The Sandboxでは、ユーザーの作成したアイテムを、他ユーザーに売却することもできるなど、価値の創出が行われています。以上のように、メタバースの価値は、「自分らしく生きる世界」を実現してくれる点にあるともいえそうです。VR技術やNFT技術の発展は、こうしたメタバースの価値をより高めることに繋がると思われます。

※4 内閣府知的財産推進事務局「メタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法 的課題等に関する論点の整理」3 頁(2023 年 5 月)

今後の予定

本稿では、メタバースとは何かについて簡単に紹介しましたが、次回以降、メタバースに関連する知的財産権や、肖像権等の法的問題について解説していきます。

本記事の内容は、公開日現在のものです。最新の内容とは異なる場合がありますので、ご了承ください。

著者

関連記事

第1回 今さら聞けない…AIって何?
第2回 生成AIの利用と法的問題①